三百匁あるという噂の鉄扇が、信じられない速さでなぎはらわれる。
あたしはとっさに身を引いて、それを避けた。
「な……っ?」
芹沢は驚いたように、あたしを見つめた。
ヤバイ、正体を疑われるか?
背中に冷や汗が伝った、その時……。
「何の騒ぎですか」
店ののれんが、静かに上げられた。
そこからのぞいたのは、悪趣味な浅葱色の隊服。
「な……」
「永倉か」
そう、そこに現れたのは、永倉先生率いる二番隊の面々だった。
「おう、土方さんの姪っ子の楓じゃねえか!」
「ど、どうも……」
永倉先生、その挨拶はどう考えても不自然です……
「なに、心配には及ばぬ。
着物を作っただけじゃ。のう?」
「へ、へい」
店の主人は、怯えきった顔でうなずいた。
永倉先生は一瞬だけ眉をひそめ、「そうですか」とため息をついた。



