幕末オオカミ



「にじゅう……」


「承知した。
それを今回はツケにしてくれるというわけじゃな」



口をパクパクさせるあたしの横で、芹沢がさも当然という口調で言った。


そこにいた全員が、「はっ!?」と目と口を全開させた。


もちろん、あたしもだ。



「のう、主人」


「いや、その……芹沢先生、前の着物のお代も、いただいておりませぬゆえ……」


「ゆえに?何じゃと申す?!」



芹沢は渋る主人の前で突然大声を上げ、持っていた鉄扇を振り上げた。



「ひ、ひいい、結構です、結構ですからっ」



店の主人は、両手で頭を庇って、座り込んでしまう。


よく見ると、こめかみに小さな治りかけのアザがあった。


もしかして、前にも……?



「最初からそう言えばいいのじゃ」



芹沢は行き場のなくなった鉄扇で、店に飾ってあった壷や花瓶を次々に叩き割った。


これは、あまりにもひどいよ。


「先生、もうやめましょう……」


「ええい、うるさい!何様のつもりじゃ!」