幕末オオカミ



そうして連れて来られたのは、とある呉服屋だった。


もちろん菱屋とは別の。


芹沢は店の者に言いつけ、次々に贅沢な反物を持って来させた。



「芹沢先生、これはいったい……」


「男のわしではさっぱりわからんでのう、お前に見てほしい」


「と、おっしゃいますと?」


「……お梅に内緒で、作ってやろうと思うんだがの……」



芹沢はそう言うと、恥ずかしげにうつむいた。


乙女かよっ!!


なんであたしが、あのバカ女の着物を選ばなきゃならないんだよー。



「……お梅さんは色白なので、青いものよりは赤いもののほうが、健康的に見えるかと……」


「おお、そうじゃの!さすが女子じゃ!」



どうでもいいですよー。


さっさと終わらせて、前川邸の屯所に行かなきゃ。


そう思いながら、あたしは適当に反物を選んだ。



「──では、しめて二十両になります」



最後に呉服屋の主人が言った台詞に、目玉が飛び出しそうになる。


に、二十両って!


新撰組の平隊士の月手当の、二ヶ月分じゃないか!!