「……寝過ごしたーっ!!」
あたしが目を覚ましたのは、昼前だった。
事情を知っていて、協力してくれている八木さんの奥さん。
奥さんが、さぞ疲れているのだろうと、気を使って寝かせておいてくれたんだ……。
ダメじゃん!!
うえぇ、早くしないと斉藤先生が巡察に行っちゃうよー。
急いで帯を締めていると、突然部屋のふすまが開けられた。
「きゃーっ!!」
「おお、スマン」
ふすまを開けたのは、芹沢だった。
スマンとは言いながら、涼しげに鉄扇で顔を扇いでいる。
遠慮しろよ、どっかいけよ!
「のう、土方の姪よ」
「な、なんでしょうか」
「ちょっとそこまで、買い物につきあってくれんか」
「はいっ?」
なんであたし!?
暇な情婦も部下もいるでしょーがっ。
なんて言えるわけもなく……。
「は、はい……一体どちらへ?」
「余計なことを聞くでない。
黙ってついてくればいいんじゃ」
「はぁ……」



