幕末オオカミ



「そうです。

近藤派は、いずれ新撰組を自分達だけのものにしようとして、私達に危害を加えるでしょう。

その時のために、もののけの力は要るのです」



新見の、子供の機嫌をとるような口調に寒気がした。


芹沢はぶつぶつ言い返す。



「そうかのう……

他の幹部はともかく、近藤はそんな男じゃないと思うんだがのう。

あの男は、本当にたっぷりとした男じゃから」


「近藤はただの愚物です。
恐れるべきは、土方です」


「土方なぁ……
あれは本当に、煮ても焼いても食えん男じゃて」



近藤局長に対する評価に比べて、土方の評価って……。


うん、ちょっと同感ですけどね……。



「とにかく、近藤派を殲滅する作戦は私が立てます。

芹沢先生は、お梅さんのために新しい着物でも作ってあげてはいかがでしょう」


「新しい着物。
そうじゃの、喜んでくれるかもしれんの。
では新見、あとのことは任せた」



それで深刻な話はおしまいになったらしく、二人は酒がなくなると同時に、それぞれ床についた。



「これは大変……」



気づけば、体中にじっとりと汗をかいていた。