夜更けになると、お梅さんは芹沢を放って、一人で床に入ってしまった。
部下達も酒を飲んで眠りについたあと、芹沢と新見が二人だけで、部屋に閉じこもった。
「こんなところに忍び込むの、久しぶりだなぁ……」
天井裏は暗い。
蜘蛛の巣に引っかからないように、頭を下げて進む。
もちろん、忍装束でだ。
気配を消し、芹沢たちの声が聞こえるところまで行き……
「八木さん、すみません」
持ってきた千枚通しで、天井に小さな穴を開ける。
「おお、ばっちり……」
そこに顔を近づけると、芹沢と新見の姿が見えた。
二人とも、ちゃんと人間の顔をしている。
ちびちびと酒をなめながら、タヌキ顔の芹沢が話す。
「のう、新見。
お梅はちっとも笑ってくれんのう。
妖(あやかし)の術にも限界があるのかのう」
な!?
こんなちょうどいいことってある!?
いきなり【妖】って言ったよ!?



