そう、蒼は何故か保健室に居た。



遼が出て行った後――――‥



保健室の一番端に置かれたベッドのカーテンが開いた。



シャッとカーテンを引く音に私は目を見開いた。
まさか、誰か居るなんて考えてもみなかったから。



恐る恐る振り向けば…



眠たそうな蒼がそこにはいた。



それを蒼は“偶々”だと言う。





「…どうして、黙ってたの?」

「随分と人聞き悪いじゃねぇの、響子ちゃん。先に俺が保健室に居たんだぜ?」

「……」





確かに、そうだ。



蒼が入ってきたなら気づかない筈がない。蒼が居る保健室に後から入ってきたのは私達の方だ。





「遼、キレてたじゃねえか」





その言葉に、改めて蒼が、ずっと保健室に居て成り行きを把握している事が分かる。



それに居たたまれない気持ちなる。後ろめたい気持ちに駆られてしまう。





「傷ついた?遼の言葉に。アイツも餓鬼だね〜」

「私のせい、だし」





私の何が原因なのかは分からない。


だけど私のせいだと感じさせられた。怒りも苛立ちも苦しさも切なさも、全部――――――私のせいだと目が語っていた。





「……」





無言になった蒼は花から手を離してゆっくりと、私へ目を向けた。



ゆったりとした動作を見つめていれば…



目が合った。



向けられた目と、交わった。





「俺もよ〜?大人じゃねえんだよ」





冗談らしき言い方。でもその目は真剣さが込められた、何とも矛盾だらけの蒼。





「遼なんか庇ってんじゃねえよ」





真剣、だった。“冗談らしき”は撤回する。全くふざけた色はない。本気の声色に眸だ。