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浅く窓際に腰かけている青藍色の髪が印象的な彼。
花を撫でる姿が何とも絵になる。
私はドアの前に立ちながら、ただ彼を見つめた。
「……」
何かを言おうとしても、何も出てきやしない。
この継続される沈黙を壊してもいいのか躊躇ってしまう。
赤い花弁を撫でる、指先。
桃。赤紫。白。
色は複色あり、八重咲きの花。
何の花なのかは良く分からない、だけど綺麗だと思った。
カチ、カチ、カチ、カチ、
針の音が何とも鮮明だ。
さっきまでは気に止めることもしなかったのに神経が研ぎ澄まされた今、凄く音がハッキリしている。
「響子」
その音に混じり、聞こえる声。
“本当に”2人だけしか居ない保健室。
誰か…なんて言わなくても分かる。
不意に呼ばれたことに肩が揺れてしまった。
花にばかり見とれすぎて、彼から意識が離れていた。突然のことに何を言われるのかと顔が強張る。
「この花、どう思う?」
抑揚のない単調な声で言う―――――――蒼。
その目は花だけを捕らえている。
言いたいことは、ある。
聞きたいことも、ある。
だけど言葉にする事が出来ない。
だから、その思いを振り切り蒼の言葉に流されるように事を委ねる。
「綺麗、」
何が言いたいのか、何が聞きたいのかは分からない。
でも率直な感想を述べた。
花を愛でる蒼から見て、この感想は深みのない単純な答だと思う。