顔を青くさせる俺は庵さんの声で廊下へと意識を戻された。
完全に庵さんのペースに嵌まっている遼太さん。
「素直になればいいのに」
「黙れ」
「そんなに今の関係壊したくないの?一度壊れてるんだから今更だよ。結構遼も慎重なんだね」
「黙れって言ってんだろ」
「ああ。間違った。臆病なだけっ、」
―――――――庵さんがその言葉を最後まで言い切る事はなかった。
遼太さんに胸元を掴まれ引っ張られたから。
なのに、再度、胸ぐらを掴んできた遼太さんに庵さんは笑みを絶やさない。
この人は確実に、この状況を楽しんでいる。

