「さっきから何が言いてえ」





遼太さんの苛立った低い声に廊下へと引き戻される。
現実逃避は俺の十八番かもしれない。



隣にいる庵さんは前に立つ遼太さんを笑った、馬鹿にしたように。



それに遼太さんは眉根を寄せる。





「まさか遼がそんなに鈍いとは思わなかったよ」

「…」

「まあ、黙って隠れていた彼奴も相当性格悪いよね」





その言葉には遼太さんは微かに目を見開いた。
黙って隠れる?誰が?――――――――響子さんと遼太さんが居た保健室で?



庵さんの言葉に黙って耳を傾けていた遼太さんが目を見開いたって事は“誰かに”気づかなかったのか?





「やっぱり、気づいてなかったんだね」





せせら笑う。



やれやれと首を竦めた際に綺麗なプラチナヘアーが揺れる。





「―――――保健室に、蒼が居ること」