「言えねえのか?」





誰しもがもうあの二の舞になりたくはないと願う。でも言わないと理不尽に睨み付けられる。



この男、普段は口数少ない癖に響子の話になると生き生きするのは何故だろう。





「い、いえ!そんなわけないじゃないですか!」

「と、とりあえず可愛い!」

「髪が綺麗!」

「肌が白い!」

「守りたくなる感じ?」

「だよな!あれは正に天使…」





言い掛けて止める言葉。一人の男があるモノを目撃して顔を青くさせる。残りの男達もそれを見ると――――、一斉に固まった。





「……」





あからさまに不機嫌な、



自分達の総長を見て。





「で、でも響子さんは総長とお似合いっすよね!」

「この世に響子さんに相応しい人なんて総長以外いないっすよ!」





畳み掛けるように総長をべた褒め。


完璧に不機嫌になる前に、褒めて持ち上げる。どうやら彼等は知恵を付けたようだ。



その言葉に機嫌を良くしたのか、珍しくフッと笑みを浮かべた。





「当たり前だ」





―――――ホント、扱いにくい奴。


アレを崇める彼等に栄誉を称えるわ。





「総長は響子さんの何処が好きなんですか?」

「全部」

「……」





即答に緑頭は言葉失う。
それは周りの奴等も同じだった。
因みに、私も。





「…強いて言えば、」





なに?と小首を傾ける。



あの男の本心を知る又とないチャンスだ。普段から何を考えているのか分からないから。



こんな機会、滅多にない。そう思い耳を澄ます。





「笑顔」





……意外と、真面(マトモ)なんじゃない。











「―――と、柔らかい唇」





変態かっ!!



思わず叫びそうになり歯を食い縛る。耐えた自身が誇らしい。



それと同時に少しだけ感心してしまった私の良心を返せ!と怒鳴りたくなった。