* * *
―――――――数分前の出来事。
急に掛かってきた電話に出るために響子の傍を離れた。少し言葉を交えると通話を強制終了。
響子の様子を見るために移動していると、私は直ぐに木陰に隠れた。
「あつい」
「おい!誰か団扇!」
「水入りますか!?」
「ドライアイスでも!」
寿戒吏が居たからだ。その周りには牙龍らしき男が6人くらい居た。
疚しいことをしていない私が何で隠れなければいけないんだと苛々が募る。
でも顔は合わせたくない。牙龍はスキじゃない。特にアイツは嫌い。いまは尚更、会いたくない。
「誰が暑いなんて言った」
「え?でも総長いま暑いって、」
「熱いって言ったんだ」
「熱い?」
「ね、熱っすか!?」
「暑さで熱中症とか!」
あの男の言葉一つでせっせと動く男の姿はまるで召し使い。
まず熱中症になるほどこの男は柔(ヤワ)じゃないわよ。
「胸が熱い」
その言葉に訝しげな顔をする彼ら。
「響子が可愛すぎる」
「…そうっすか」
響子の可愛さに胸焼け?―――――――私はアンタのウザさに胸焼けよ。
相変わらず響子の事になると天然を炸裂させる彼奴を誰かどうにかしろ。何故か響子が絡むと人が変わる。
あの男の下らない言葉にも返事をする緑頭は凄いと思った。
「お前ら、響子の何処が好きだ?」
「「「え゙!?」」」
ふとそんな事を言い出した自分達の総長に、あからさまに嫌な顔をした召し使いたち。
確か一年のときこの話題で響子をべた褒めした奴等に嫉妬して機嫌悪くなったんだっけ?自分から言い出した癖に。