ピョンピョンと飛び跳ねてガラスから逃げ出した先程の蛙が戒吏の行く手を遮る。








―――――戒吏はそれを避ける事もなく蛙を容赦なく蹴り飛ばした。




命の儚さを知ろうよ…



私は嫌いな蛙に少しだけ同情して悲痛な表情を浮かべた。



蛙ごときに、容赦ない蹴り。
そのあまりのムゴさに周囲からは悲鳴が上がる。



隣に居る委員長も『えげつない!』と顔を歪めて叫んだ。



容赦ない戒吏と気持ち悪いけど可哀想な蛙に窶(ヤツ)れ気味になり、癒しの里桜が立つ方を見る。





「里桜ぉっ……あれ?」





泣きそうになりながら私は里桜が凭れていた木陰を見て、首を傾げた。



不可解な声を出すと委員長から『どうかした?』と聞かれたけど、私が委員長を見る事はなかった。



――――木陰を目を凝らして見つめる。









「…里桜…?」





里桜が、居ない。



何度見つめてもその場所にゴールドベージュの巻き髪をした女子生徒は居ない。



今日は2人でツインテールにしようと言いながら髪を結んだ―――なのに、その女子生徒は何処にも見当たらない。





「(里桜…?)」





――…一抹の不安が過った。