男たちが何処かに去ったのはいいけど私はこれから、どうして良いのか分からなかった。彼等―――――――牙龍がいるから出来ることなら早く此処から立ち去りたいけど私は橘さんに助けられた手前無断で帰ることが出来なかった。
お礼を言って帰ろうかな…?
そう思った。
でも彼らは私を無いような存在で見ている。そんなか中私が声を掛けていいのか、話しかけることを戸惑ってしまう。
私のことを意識していると云えば空ぐらいだ。
勿論いい意味ではなく悪い意味で。もともと女嫌いだったのを更に私のせいで悪化させてしまった。
あとは、もう一人。
庵だ。
誰も気がついてないけどチラチラと私を見ている。
庵は優しい。私を気遣うような心配するような目で見ている。それが今の私の唯一の心の支えなのかもしれない。
「ああ!」
――――――突然、橘さんが大声を上げた。
私は橘さんに視線を向けていたので橘さんが私の方を向いたとき、ガチリと目があった。
「桃子ちゃん!だ、大丈夫だった!?」
「あ、うん」
私からしたら殴られそうになった橘さんの方が心配。なのに橘さんは私に心底心配するような視線を向ける。
それに少し、笑えた。
馬鹿にするような笑いじゃなくて素直で純粋な橘さんに。私はそんな橘さんを見て自然に顔が綻んだ。
「ありがとう」
少し気恥ずかしく照れ笑いでお礼を告げた。

