「――――なら俺が手掛けてやる」
そしてな不敵な笑いを浮かべた。もう、弱々しい戒吏はそこに居なかった。
「白紙を愛の色に染め尽くしてやる」
いつもの無表情で何を考えているのか分からない顔を不敵な色で染めた。
しかし私は固まった。
表情にではなく言葉に。
あ、愛の色って…
「…キャラじゃないよ」
「…うっせえ」
「…何見たの?」
「…遼が見てる昼ドラ」
キザ過ぎる言葉に私は眉を顰めた。反吐が出そうな程に似合わない台詞だった。
大方、純愛ラブストーリーが好きな遼に見せられた泥沼の昼ドラに影響を受け実践したのだろう。
しかし実践はあり得ないくらいに失敗に終わる。少し自分でも似合わないと思ったのか照れながら戒吏は後悔している。
照れ隠しに再度私を抱き締めてきた。
「待つ。お前が俺をもう一度見てくれるのを。確かに信用を取り戻すのは難しい。それでも、いいから」
「…、」
きっと気づいている。
私がもう、戒吏を好きじゃないことに。
“好きじゃない”わけではない。
“好き”が分からない。戒吏との突然の別れにそういう気持ちに疎くなってしまった。
裏切られた、という気持ちが強すぎたんだ。
「だからそれまで誰のものにも成るんじゃねえぞ」
「…もし、なったら?」
「なるつもりか?」
「…そうだって言ったら?」
聞くつもりはなかった。
だけど気になり、恐る恐る聞いてみた。
いまのところ“誰かのもの”になるつもりはないけど…
しかし私は聞いた事を後悔する。