牙龍−元姫−





その言葉に私は何も言えず口を閉ざした。





「捨てきれない想いだから、後悔するんだ」





譲れない想い、揺るがない想いがソコには見え隠れしている。



でも盲目なんだ、戒吏は。



扉に気付いていない。一つが閉じる時は別の扉が一つが開く。確かに一度私達の扉は閉まった。



けど戒吏は閉じたほうばかりを眺めていて、もう一つの方に気付いてない。
こちらに向かって開かれている新しい扉に。





「私達は終わったよ」

「…、」





私の言葉は残酷だったのかもしれない。その言葉に戒吏は顔を歪めた。



頬にソッと手を添えると、優しく微笑む。





「終わりは始まりでもあると思うの」

「―――はじまり?」





―――思い出されるのはあの日。“別れよう”そのたった一言で終わった私達。確かに、端から見ればそうかもしれない。



やっぱり…とか
そんなもんだったのか…とか
思われても仕方ない。



だけど私は十分に理解した。



“別れよう”その戒吏のたった一言に…


沢山の 愛情と
沢山の 憎しみと
沢山の 哀れみが



込められていたことに。



抵抗してれば、泣き喚いてれば、何か変わった?
…いや。変わらない。



戒吏は言った、わたしと出逢えた事は運命だって。なら別れも宿命だったのかも。



結局のところ運命論は及ばない力で、変えられない。出逢いも別れも偶然であり必然。全てシナリオ。