牙龍−元姫−




その何かしらの後悔を悪いように捕らえる戒吏に共感出来なかった。




「……そ、うかな?」





だから私は恐る恐る言う。こんなこと言うなんて何を言われるのか分からない。でも痛々しい戒吏を見過ごす事も出来なかった。





「確かに人間後悔ばかりじゃ進めないよ。でも後悔しないと一層進めないんだよ」





後悔―――悔やむ事は悪い事でも恥ずかしい事でもない。反省するのに然るべき事。



後悔した所で済んだことはどうなるものでもない。だけどそういって居直ってしまっても進歩も成長もする事も皆無。その済んだ場所には既に何もないから。



だけど無益な後悔をするのが人間の性(サガ)なんだろう。



しかし戒吏はそう思わなかったみたいだ。





「―――進まなくていい」

「え?」

「何かを始めるには、何かを捨てなければならねえ」





…確かに、そうだ。



人はそこまで器用ではない。



何か一つ、大事にしている場所にもう一つ加え、平等に愛せと言われてもそれは無理だろう。



きっといつしか、ズレが生じる。





「でもこの想い捨てるくらいならずっと此のままで構わない。進めなくても、いい」