牙龍−元姫−






「お前の隣がもう俺のものじゃないことなんて疾うに自覚済みだ。けど―――――‥」





脱力したように肩を落とす戒吏は珍しく弱々しい。



ポツリ、小さく想いを言葉にする。




「捨てきれない」

「…戒吏」

「忘れられない」

「…戒吏、」








「――――好きなんだよッ」





声を振り絞るように荒々しく叫ぶ。私の呼び掛けにさえ応じない。取り乱して自分の想いを口にする戒吏は、戒吏じゃないようだった。


はじめてかもしれない。戒吏から“好き”なんて言葉を聞いたのは。


一度も言葉にすることなんてなかった。表現で私を想ってくれていることは一目瞭然。でも、言葉にされない分不安もあった。





「こんなにも好きなのにお前は俺のものじゃない。わかってる。わかってるけど……捨てきれねえ。未練がましいにも、程がある」





私の髪に指を通しソッと掬う。



少し距離が開き、漸く戒吏の顔を見れた。眉根を寄せながら目を瞑り、何かを思案している。





「後悔ばかりだ。最後に残ったのは結局、後悔だけ」





声を尖らし責めるような声色は自分に対して?





「ハッ。情けねえ…」





嘲笑する戒吏が痛々しかった。



そんな彼を見て心がギスギスする。