牙龍−元姫−






……戒吏、と小さく呟く。



戒吏が凄く弱々しく見える。大きいはずなのに、凄く小さく見える。


錯覚?なら何がそう錯覚させているのか分からない。





「―――…こんなに」

「…え?」





突然呟いた戒吏に聞き返す。抱き締められ戒吏の胸に顔を埋める私は、表情を伺えない。



戒吏の顔が見たくて腕から抜け出そうとするが――――――やはり更に強く抱き締められる。





「………こんなに近くに居るのに、遠い」





そう、戒吏は呟いた。



その言葉に目を見張る。



遠い?何が?…訳が分からない。






「“居る”ことが当たり前すぎて気付けなかったなんて今更すぎる」





背中に回っている手が私の服をグシャッと荒々しく掴む。





「もう全て遅いのにな――‥」





そう言うと戒吏は脱力したように腕を緩めた。表情は見えないから分からない。何を思っているのかも、分からない。