「響子!変な目で見られたら直ぐ俺に言えよ!俺がソイツをブッ飛ばしてやる!響子が呼んだら3秒で駆けつけるから!」
「…空」
「なら俺は1秒ね〜。俺は瞬間移動出来るから空より早く着いちまうじゃね〜の」
「…蒼」
2人の言葉にジーンと胸が熱くなる。皆の優しさに胸の事なんてどうでもよくなり交差させていた腕はいつの間にか下りていた。
「嘘つくなよ。そんなの出来ねえだろ!?瞬間移動なんて魔法みたいなこと無理に決まってんじゃん!」
「俺は魔法界で修行してきたから出来んの〜」
「ま、魔法界…」
“魔法界”
そんなもの無いと分かっていながらもその響きに空は息を呑む。
私も少しときめいた。だって小さい頃に一度は憧れた“魔法”
ときめかない筈がない。
蒼の魔法界宣言に少し目を輝かせていると痛む頭を擦りながら寿々ちゃんは言った。
「でも響子の胸柔らかい!プリンみたい!言葉にするならぷるるんって感じ!何カップ?――――――――――痛ッ!」
「まだ懲りないの寿々。いい加減にしないと僕も怒るよ?」
「…す、すみません」
ピコピコハンマーで遼が叩く前に庵が分厚い本の角で殴った。今のは確実に痛いと思う。
普通なら文句を言う痛さでも庵の迫力に負けて口を閉ざした寿々ちゃん。
「ホント羨ましいことすんじゃねえの。どうせなら俺も触りてえよ」
「―――蒼」
「冗談冗談〜。本気で怒んじゃねえよ、庵」
蒼が本気で言ったつもりはないと私も分かっていたけど、庵の目が本気で怒っていた―――――――空気にピリッと亀裂が走る。

