牙龍−元姫−





階段を上りながら、少しだけ昔に耽る。





「…懐かしい」

「響子はよく階段でコケてたよね」




からかいが含む笑い、でも優しい柔らかい声。優しく包み込んでくれる手の温もりに和らぐ。





「ち、ちょっとしかコケてないもんっ!」

「あははっ」





声を出して笑う庵は珍しい。いつもはふんわりと大人の余裕みたいな笑みを見せるから。



中段まで上ると―――‥





「…あ、」

「どうしたの?」





私は思い出したように振り返る。振り返れば皆は私達に視線を向けたままだった。



倉庫は広い。上から下を眺めるこの景色も、見慣れた顔触れも全てが懐かしい。



あの場所はいつも彼の定位置だ、とか。あそこではよく寝ている人が居た、とか。



走馬灯のように頭を駆け巡る。



何だか変な気分。いまだに実感がない。あの扉から私は去っていた――――でも私はいま此処にいる。


その信じ難い事実ながらも、何故だか自然と笑顔になる。多分ここ最近で一番いい笑顔。



そして先程の問いに答える。



“覚えてますか!?”そう皆から問われたから―――‥














「わたしっみんなの事も覚えてるよ!ずっと皆のこと……忘れた事なんてなかったよっ!」

「――ッ」





普段はこんな大声出さない。



自分でも珍しいと思った。肺活量がないのか人よりは然程大きくはないけど私なりに目一杯の大声のつもり。