牙龍−元姫−






「あ!そうだ!」





急に叫び声を上げ、立ち止まった寿々ちゃん。



勢いよく隣を歩く私に、身体を向けた。





「響子ちゃん言ってたじゃん?猫田の特別賞受賞が掲載された雑誌みたいって!」

「うん」

「あるよ?雑誌!」





え!?



瞬時に私は瞳を輝かせる。



雑誌とは受賞者の名前が掲載されている月刊雑誌。私は早苗の名前が載っている雑誌が見たくて堪らなかった。



しかし誰も持っていなくて肩を落とした。最近の雑誌ではないため当たり前なんだけど。



――――――でも寿々ちゃんからの思わぬ朗報に瞳を輝かせた。





「今から時間ある?見に行こう!」

「うんっ、行きたい!」





―――って、え?



見に行く?どこに。





「ねえ、どこに行くの?」

「戒君たちのとこー!」





てくてくて――‥



ピタッ



歩いていた足が止まる。



場所を聞くときに首を傾げたままの状態で固まった。





「え」

「どうしたの?」





いまなんて?



未だ状況が読めず首を傾げたまま固まっている。普通この首の体勢なら辛いと思う。





「早く行こう?―――港の倉庫!」









幾らなんでもそれは…



と躊躇う。



わたしは彼処から去って、一度も倉庫に行ったことはない。あまりの突然すぎる展開に戸惑いを隠せなかった。





「大丈夫、大丈夫!」





手首をグイグイ引っ張られ、



為されるがままに無理矢理連れて行かれる。





「え、ちょっ、」





反論の余地すら与えない強引さ。もう雑誌はいいから…と言うけど寿々ちゃんは全く聞いていない。