牙龍−元姫−




いつも私は勝手に持ち上げられた。他人の価値観で私は測られた。



今の寿々ちゃんのように。だけど寿々ちゃんのように純真さからではなく、ただの嫌味。



“響子ちゃんなら”
“響子ちゃんだから”



私だから何?
私だったら何?



私は特に優れた事はない。飛び抜けた所も何一つない。然して頭も良くない。運動も出来ない。気が利くわけでもない。…ほらね?



私は欠陥人間そのもの。



なのに、何でなんだろう。



誰もが私を上に持ち上げる。
他人より遥か上に。



自惚れてるわけじゃない。本当に私に気を使って一歩下がる。それは客観的に“特別扱い”



仕舞いには、その光景をみた他の女の子からは“響子ちゃんって嫌みったらしいよね”とか言われた。


そんな事を言う貴女の方が嫌味だよ…なんて密かに思った。同性で私を妬む人は決して少なくはなかった。



好かれたいわけじゃない、
でも嫌われるのは辛い。



ずっと極端だった、
好かれることと嫌われることが。



どうすれば皆の想像できる“野々宮響子”で居られるか、考えた。



そしたら××は言ったんだ。



“常に笑顔で居ればいい。君には特別優れたものはないさ。でも君の笑顔は一番、輝いている”



それから私はずっと笑顔だった。辛いときも悲しいときも。周りには答えられるような“野々宮響子”で在りたいと思った。



だから、羨ましい。
羨ましかった。



有りの侭の自分を表せている寿々ちゃん。



確かにお世辞にも普通、とは言えない。華やかではないし目立ちはしない。でも、羨ましい。



なら、私の有りの侭の自分とは?



そう聞かれると、私には分からない。お洒落は好き、運動は嫌い、勉強は不得意、笑顔で居ることで周りも笑顔になってくれるから、辛くはない。



“いま”が有りの儘?





「響子ちゃんはそのままでいいと思うよ?」

「…え、」

「いまでも充分魅力的!」





私の考えている事が分かったのか寿々ちゃんが言ってくれた。そんな寿々ちゃんに少し気が楽になった。それと同時に―――このままでもいいかな?そう思えた。