「虐められてるときに戒君達と出逢ったんだぁ〜」
「みんなが助けたの?」
「そんなバカな!」
突然のカミングアウト。
私は寿々ちゃんと皆の関係を知らなかったから興味深かった。
大袈裟なリアクションをとる寿々ちゃんは、目を見開いて“あり得ない!”と言いたげに顔を横に振る。
「戒君達が人を助けようとするなんて響子ちゃんぐらいだって!戒君達に助けられるなんてあり得ない!悪夢だ悪夢!」
「そんなことは、」
そんなことない。みんな優しいよ。――――そう言おうとしたけど言えなかった。寿々ちゃんのあまりの迫力に負けて。
「アタシが虐められてるの見て遼ちんとか蒼っちは笑ってたぐらいだし。空たんには睨まれてたし、いーくんはただ苦笑いしてたよ」
「え、戒吏は?」
「無言」
何だが容易に想像できる。
「前からの知り合いだったから、アタシが虐められてんのが可笑しかったんだと思う」
「―――知り合いなの?」
「うん。中学からの」
少し驚いた。いや。かなり驚いた。
まさか寿々ちゃんと皆が元から知り合いだったなんて…。
私が高1で彼らと関わっていたときに寿々ちゃんの話なんて出たことはなかった。私の表情から何が言いたいのかを悟った寿々ちゃん。
「アタシが自分達の知ってる“橘寿々”だって知らなかっただけだよ」
前のアタシと今のアタシとは相当かけ離れてるしさ。このまま卒業までバレないように地味に過ごそうとしたけどバレちゃった!
と笑いながら言う。
改めて前の寿々ちゃんを見てみたいという好奇心が煽られる。
「元から知り合いじゃなきゃ皆と居るなんて出来はしないって。だって戒君達の警戒心半端なく強いし。空たん女嫌いだし」
「…そ、うかな」
「うん。でも響子ちゃんは特別。だから皆の警戒心がわからないんだよ」
そこまで警戒心は感じたことはなかった。距離感を感じた事は多々あるけど。
空に関してもたまに女嫌いだと言うことを忘れてしまう。
「無条件で優しさを与えられてる響子ちゃんは絶対的存在だからさ!」
そんな大それたものじゃないよ、
―――――その言葉をグッと呑み込む。
寿々ちゃんの瞳には僻みが見られなかったから。

