『うーん。暇潰しには持ってこいだったしー、巧くいけばあの女も潰せるしねー。手を貸すのも悪くないかなーって』

「お前はくどいぞ。面倒臭いのは白夜だけで充分だ。決闘でも申し込んだらどうだ?」

『そんなこと出来たらやってる!あの女は僕を覚えていないんだよ!絶対あの女は僕がやっつける!あんな化け物染みた女他にいない!僕の屈辱を晴らすんだよ!』





普段の喋り方は消え失せ、冷静さの欠片も狂喜染みた欠片もない春陽。



“あの女”には憎しみに似た感情を抱いている。



夏彦はそんな片割れに対して珍しくラーメンより優先させ、割り箸を置くと水を飲む。しかし目だけはやはり、こってり豚骨ラーメンに釘付け。





「そんな悔しかったのか?負けたのが」

『煩いデブ!僕は一度たりとも喧嘩で負けたことなんか無いのに、何で女なんかに勝ち逃げされなきゃいけないんだよ!』

「俺は仕方ないだと思う。アイツはもう脚洗ってるんだ。姫でもないのに牙龍と居るのも強いから許されるんだろう?」

『それだよ!強いからムカつくんだよ!女のくせに僕に勝つなんて!しかも留めを刺さなかった!それに加えその後は解散!?』





―――ふざけるな!



珍しく声を荒げる双子。怒鳴り声に一端、携帯を耳から離して顔を顰める。



自分の興味のあるものにしか感心を見せないアイツに、1回拳を交えただけの春陽を覚えろ…

というほうが無理なのに、

と夏彦は思う。どう考えても理不尽すぎる。