「無理。いくら白鷺千代の小説だとしも字がいっぱいだから無理。マンガならいいけど」

「え〜…」

「マンガはいいよ〜?あ!はやくあのアニメの続きみたいんだよね!“キョオコ”と“アキラ”の恋愛模様が気になる!」

「き、きょおこ!?」

「キョオコはキョオコでもマンガの“キョオコ”ね。私は“ナガレ”君が超タイプなんだよねーっ!めちゃくちゃ格好いいの!このままナガレ落ちを希望する!」

「へ、へえ」

「とりあえず小説に興味はない。あんたもこれ貸してあげるからマンガの良さに惚れな」

「い、要らないし!」





ずいずいとマンガを付きだしてくるりっちゃん。



最近は少女マンガに凝ってるらしい。“ナガレ”くんと言う名前を度々聞く。小説には微塵も興味がないみたい。



面白いのに…と不貞腐れる。



上半身を机に身体を預けて、項垂れた。





「別に私が読まなくても良いじゃん。それにこの本があったから、あの人と知り合えたんでしょ?」





りっちゃんは【深紅の薔薇】を、数回コンコンと叩きながら私に問う。



その言葉にだらけていた私は―――――バッ!と起き上がり、目を輝かす。



よくぞ聞いてくれた、りっちゃん!





「そうそう!あれは運命だと思ったよ!絶対神様は私の味方だよね!実は図書室でさ――――‥」

「ストップ!」





運命の出逢いを語ろうとする私に制止をかけるりっちゃん。



私の顔の前に“バッ!”と掌を見せるようにして叫んだ。



なに?これからが良いところなのに。



りっちゃんは呆れたように私に言った。





「……それ何十回も聞いたって。聞き飽きたから止めて下さい」

「え、ええーっ!?良いじゃん!あと1回くらい!」

「何十回も聞いたからもう充分なの!それにその1回が長いの!長すぎるの!それに絶対どこか妄想入ってるし!」

「なっ!失礼な!妄想なんかじゃないから!だって本当にっ」

「あー!ハイハイ!もう充分聞いたから説明不要!



て言うかアンタ、その人と約束あるんじゃなかった?」





話そらしたな!?



と威嚇するも、



私がその人とした放課後の約束を持ち出したことで敢えなく終わる。