恍惚とする私に友人・りっちゃんは怪訝な顔をする。



小説を無理矢理奪い、ビラビラと雑にページを捲る。



ちょっ、雑すぎだから!
もう少し大事に扱って!





「私には分かんないな〜。何で?女でもスキなら奪えばいいじゃん。最後にかっさらえば良かったじゃん」

「はあ〜…分かってないな〜…。りっちゃんは。ミナはお姉様が好きだから身を退いたんだよ」





そう。ミナはお姉様に婚約者が居ることを知り、様々な葛藤のなかで恋と云うものを学んでいく。



はじめての恋に思い煩いながらもお姉様を好きで居続ける事を決めたんだよ、好きだから!



そんな健気なミナの気持ちも理解出来ないなんて…!





「でも本当に好きだったなら、私は奪うけど」

「ち、ちょっと!人の話聞いてた!?」

「“幸せ”なんて奪ってからでも遅くないじゃん。婚約者と引き離すことがお姉様にとってが悪いことなの?」

「だ、だからミナはお姉様が婚約者と一緒になって幸せになれるように!」

「ミナが幸せにすればいいじゃん」

「…え?」

「“ミナ”が“お姉様”を幸せすればそれでいいんだよ」




あっさりと告げた、りっちゃん。小説を捲る手は依然と止まない。ぱらぱらぱらぱらぱらぱら。



まるでぱらぱら漫画を見ているかのよう。





「あー。私にこんな純情なもんは似合わないなー。別に私の言ったことは気にしなくていいよ?」

「純情、か」

「どうしたの?」





急に考え込む私にりっちゃんが不思議がる。



りっちゃんの目を見れば、悩む私が映っている。



――――恋は決してお綺麗なものじゃない。だから。



続編の【茨棘の罠】があるのかもしれない。