俺の“もしかしたら”という勘は当たっていた。



正体は同じクラスの橘だった。



前々から変な奴だとは思ってはいたが既に変人通り越して変質者だ。










橘は大野さんのあからさまな拒絶を、気に食わなさそうに吐き捨てる。



刑事ドラマで犯人を追い詰めた際拳銃を向けられ“手を挙げろ!”と言われたときの動作のように、両手をひらひら振る。





「遼ちんが言ったからやっただけなのにさー。あーあ。やらなきゃ良かったー!」

「遼太!?なに考えてんだよ!神無祭の話じゃねえのかよ!?」

「神無際に決まってんだろうが」

「は?なら何で、」

「あいつらに無くて俺達に在るもの。即ち技術力!」





3人のやり取りを盗み聞く。



加賀谷さんと対等に言い合えるのはC組では恐らく、この2人のみ。


そして加賀谷さんから、思いもよらない言葉が。



技術力?(まさか――‥)



俺の中で1つの仮定が生まれた。それは俺だけではないと思う。それもその筈。この状況で橘が“こんな事”をしているんだ。嫌でも分かってしまう。






「運動能力?んなの今更どうなることじゃねえだろ―――――なら俺等が狙うのは、ただ1つ!」






輝く金色の髪。



俺達の神無際も輝く。






「パフォーマンス点だ!」






派手に高らかにいい放った加賀谷さん。



ニヒヒと八重歯を見せながら笑う加賀谷さんは男前だった。



そして、たった今新たに芽生えた勝算に“勝てるかもしれない。”と思った。



闘争心に火がついたのは、きっと俺だけじゃない。