「響子に手を出しててみろ、ぶっ殺すぞ」
――――いま此処で根絶やしにしてしまいそうな迫力。
目を血走らせる遼太さんを見て、流石に恐れをなくしたのか何度も首を縦に振りました。
あまりの恐怖に声すら出ないのか機械のように何度も頷きます。
「…ッ」
自分が凄まれたわけでもないのに、
足が震えた。手が震えた。
少し声が零れました。
吐息が震えました。
僕は一番後ろにカン太君と並んで立っています。一番後ろに居るんです。先輩と先輩が立つ間の隙間から見ているんです。
―――なのに、怖い。
誰も震える僕を気にも止めないでしょう。気づくことすらないでしょう。逃げたいと願っている事に。
逃げたいです、此処から。
怖いです。息苦しいです。
無意識に後ずさった――――――――――そのとき。

