「なんで棄てんだよ!確かめようがねえじゃん!馬鹿野郎!」
「棄てたのは僕じゃなくて空だよ」
「お、俺ぇ!?」
空さんが庵さんに怒鳴りながら詰め寄りましたが、瞬時に空さんの表情がお化けでも見たかのような顔に変わりました。
よほど自分が棄てたことが信じられないのでしょう。
「き、響子の写真を俺が棄てるわけねえじゃん!嘘つくなよ、庵!」
「おまけに踏みつけてから棄ててたよ」
「……」
庵さんは精神的に追い詰めるのが得意なのでしょうか…?
ですが多分いまのは善意ですね。悪気がなさそうな顔です。記憶にない空さんに助言して上げたようです。空さんにとっては要らない善意みたいですが。もはや顔がムンクの叫びのようです。
「オイ」
遼太さんが呆然とする空さんを無視して“片桐さん”に話しかけました。
そして冷たい瞳で見下ろします。
「お前、響子に何かしたか?」
「な、何も!姫には何もしてねえ!ただ牙龍から追い出すように仕向けただけだ!!」
「本当だ!信じてくれ!」と必死に懇願しています。
しかし気づかなかったのでしょうか?
“追い出すように―――”
そう言った直後―――‥
皆さんが殺気立ったことを。
なぜ気づかないのでしょう。
どうしてあの瞳に気づかないのでしょうか。
自分の命運の事しか頭にないからですか。
なんて浅はかな方なのでしょう。
僕は息を呑みました。
恐怖心を呑み込むように。
きっと僕の瞳は恐れで揺れ動いています。

