『片桐豪さん、ですか?』

『ああ。先代の副だよ――――――――総長を恨んでんだ。』

『え?その人は先代なんですよね?戒吏さんを恨む理由がどこにあるんですか?』

『自分が次の代の総長になりたかったからだろうな。慎さんが引退したあと、きっと成るつもりでいたと思う。』

『……逆恨みでしょうか?』

『そんなとこだ。絶対にあの人が総長になることはねえ。相応しくねえからな。誰も賛同しねえだろ。』

『何故ですか?』

『副を務めていた頃から裏でコソコソ何かやってたみたいだからな。北の奴等とも繋がっていたみたいだしよ。』





北街に向かう途中雨に打たれながら交わした言葉を目を閉じて思い出します。



バイクに乗れない僕を後ろに乗せてくれた先輩。



風と雨で聞き取れにくくも、しっかり耳に付きました。



北街は――――――荒れ地でした。


統べる者が居ないため、荒れ放題、好き放題。



自分の目に映る情景に心底、東で良かったと思いました。








――――――気に入らねえ、そう目の前で告げられた先代副総長に言われた今の牙龍総長。






「なら丁度いい。俺もお前が気に入らねえ」






ここにきて初めて、表情を歪ませました。



目に見えるほどに憎悪で瞳が染まる。滲み、燃え、帯びて、冷める事を拒否するかのように。