「俺達が誰だとか関係なく俺は響子ちゃんとトモダチでいたい」

「…緑川くん」

「何なら彼女でも大歓迎だけどね」





ヘラッと笑った緑川君に私が申し訳ないと思った。



“何者か”なんて今さら過ぎた。里桜しか居なくなった隙間に入ってきたのはこの二人だった。はじめは怖かったけど、いつしか、もどかしく感じ安らぎを覚えるようになっていた。



もう二人が誰だってどうだっていい。輝君は輝君だし緑川君は緑川君なんだから。私が二人と過ごした時間は偽物でも虚像でもなく、温もりに溢れていた。





「……誰か、なんてそのうち分かる」

「……輝くん」

「自然と知るときが来る。そのとき俺を……俺たちをお前が拒絶しなかったらまた一緒にアニメでも何でも見てやるよ」





ポッキーを加えながらぶっきらぼうに言う自称わたしのライバル。





「ふふっ。うん!また一緒に駄菓子屋にも行こうね!」

「けっ。お前と行くと嫌味なぐらい“アタリ”の棒を引くからウゼエんだよ」

「響子ちゃんはラッキーガールだからねー」

「なら今度は輝君のぶんまで引いてあげるよ?」

「ぜってえ嫌味だろ!」





またいつものように笑う。



里桜が帰って来るまでもう少し。それまでに気持ちを入れ替えとかないと里桜が心配する。目覚めたときの不安気な表情が未だに拭えない。




輝君や緑川君のこと、千秋や里桜のこと、春や冬や秋のこと、全部がこんがらがるなか、



1つだけ、ずっと頭の片隅に残っているものがある。





「裏切り、か」





―…………小さく呟いた。