「私が怪我したのはあのひとのせいじゃないよ…?」

「あー…うん。後で知った」





私の傍から立ち去る彼に緑川君は勘違いした、と言う。申し訳なさそうに告げる彼に笑ってしまう。謝らないとイケないのはコッチのほうなのに。





「ゴメンね……それと、有難う」





緑川君の手を握り締めて微笑んだ。伸ばした私の腕にはまだ白い包帯が巻かれている。少し痛いけどこうやって毎日来てくれる彼らの優しさに触れるたびに傷みも和らいだ。





「これ役得だねー」

「風見に殺される前に手ェ離したほうがいいと思うぜ…」

「はいはい。名残惜しいけどまた手繋ごうね響子ちゃん」

「う、うん?」

「分かってねえのに返事すんな!」





輝君にバシッと頭を叩かれた。



酷い…病み上がりなのに…





「だいたい謝らなくていいんだよ。コイツが勝手に暴走しただけなんだからよぉ」

「あははー。ごめんねー」

「それに春に殴られてると誤解すんのも無理ねぇよ。アイツなら本当に遣り兼ねねーし」

「(………あ。まただ)」





また“春”と言った。それも上辺じゃなくて恰かも春を知っているような口振り。それは輝君だけでなく緑川君も同じだった。





「安心しろよ。冬に灸も据えられた事だろうし仕返しに来たりはしねぇだろ」

「……あの」

「んぁ?何だよ」

「……知り合い、なの?」





恐る恐る聞いてみた。