「つか風見はー?」
コンソメ味のポテトチップスの袋を開けながら輝君がいう。
「あ、薬局に行ったよ。私の薬を買いに……」
「響子ちゃんがそんな顔することないよ。里桜ちゃんは響子ちゃんの為にスキで行ってるんだからさ。パシらせとけばいいよ」
「…お前縛られてベランダから吊るされんぞ」
申し訳ない顔をする私に緑川君は気を使ってくれた。だけど言葉のチョイスに輝君がポテトチップスを食べる手を止めて青ざめる。
3階にあるピンクと白を基調とした私の自室。
…吊るすことも出来なくはない。それを悟った緑川君も少し顔色を悪くさせて空笑い。こういう場を見るといい意味でも悪い意味でも里桜の影響力は凄いと思ってしまう。
「いまごろ薬局かな…。いまから行けば鉢合わせになると思う?」
「はあ?風見を迎えに行こうって言うのかよ?」
「うん」
「止めとけって。お前病み上がりじゃん。その気持ちだけで嬉しいと思うぜ。外に出ちまったらそれこそアイツ怒るだろ」
「輝の言う通りだよ響子ちゃん。怪我治ったばかりでも本調子じゃないでしょ?まだ外に出るには早いよ。わかった?」
「は、はい……」
緑川君の形相に臆する。さすが輝君を手名付けるだけあって説得力が凄い。頷いた私に満足したのか髪を撫でてきた。
「髪キレーだね。ふわふわしてる」
「緑川君の髪も綺麗だよ。蜜柑の香りがしてきそう」
「あはー。ありがとー」
本当にそう思っているのか解らない返事。触るとチクチクしそうな短髪の輝君とは対象的に少し眺めの綺麗な橙色の髪の毛。
髪の毛から頬にスッと移動すると「あははー。柔らかい。」と面白可笑しく頬を摘まんだり突いたりしてきた。
「日焼けしてないから真っ白だね。だいぶ血色もよくなったよ―――――――あのときは死人みたいな青さだったのに」
細められた瞳はきっとあのときのことを思い出して居るはず。

