―――携帯の通話を切った戒吏から聞かされる話は僕も空も、戒吏本人も驚愕した。
驚きよりも後悔、そして怒り心頭に発した。
記憶の端で思い浮かぶのは涙ぐむ龍のお姫様――――――お姫様が長い睫毛を震わせているのを見て見ぬふりをしたのは僕達だった。そんな表情をさせているのも僕達。府甲斐なさすぎる。
「(……響子)」
どうしようもなく会いたい衝動に駆られるのをグッと耐えると心のなかで名前を呟く。
確か最後に会ったのは学校の廊下。一体自らを“裏切り者”なんてどんな気持ちで言ったのか、思ったのか。
―………バンッ!
名前を密かに呟いたとき、痛い程の静粛に大きな音が鳴り響いた。「なんで?」なんて愚問だった。空が扉を蹴り飛ばして出て行ったからだ。
普段もなら蹴り飛ばした空を叱るが今はそんな事どうでもいい。
大きな音をたてて空が駆け出して行ったのを目で追う。部屋に残されたのは僕と戒吏だけ。戒吏も空を止めることはしなかった、無駄だと悟っているから。
きっと戒吏から、遼と蒼が既に動いていると聞いて居てもたってもいられなくなったんだろう。
遼・蒼・空―――戒吏が動くなら牙龍も動かざるを得ない。
戒吏に「どうする?」なんて、聞かなくても見ればわかる―――――――無言で部屋を出ようとドアに向かう戒吏を見れば。
僕もいつもより重い腰を上げて、戒吏に続いて部屋を出ようと動く。
意外にも冷静な自分がそこにいる。
後ろ手でドアノブに手を掛け、扉を閉めた。
閉める前にチラッと振り返れば扉の隙間から見えた誰一人いない、ヒッソリとした部屋。
思わず嘲笑ってしまった。お姫様が居たときには静粛なんて考えられなかった場所なのに。いつからこんな修正不可能な程に壊れていったのか。
なぜか、
泣きそうになった
―――――パ タ ん
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