牙龍−元姫−





「蒼衣が“美”っつーなら、庵は“芸”って感じ?」

「だから僕が普通じゃないの?」

「うッ………そ、それは、」





言葉を濁らせて目をうようよ泳がせる。僕と目を合わせようとしない。空のクセに失礼だよ。



空から見て僕の何が普通じゃないのかが分からない。別に“芸”ならフツーじゃないの?





「毒舌だからだろ」





―――――戒吏がボソッと呟いたのを聞き逃さなかった。





「毒舌?僕が?」





毒舌?僕が?―――そんな馬鹿な。どう考えても物腰柔らかな王子様に近いよね。毒舌なんて言うから少し驚いちゃったよ。





「コイツは無自覚なだけだ」

「…自覚ねえのか庵?」

「天然なものだから、仕方ねえ」

「…なるほど」





目の前で繰り広げられる戒吏と空の失礼なやり取り。内容は僕の事。天然の毒舌?――――そんなの初めて聞いた。だいたいそんなつもり全然ないのに。





「酷いよ、空…」

「は、はあ!?まさかの俺ェ!?俺じゃねえだろ!言い出したのは戒吏だ!」

「……」

「…な、何だよその眼!」





たじたじの空を見て何だか笑みが溢れた。やっぱり空って面白い。蒼と遼が構う理由がよく分かる。―――――――――毒舌?そんなの全く気にしてないのに。