牙龍−元姫−






そう考えると…





「濃いな、」





改めて考えると個々の主張が強い。と言うか強すぎる。



大雑把に括りを作ると戒吏=メカ、蒼=花、遼=海、空=格闘技。僕の中ではこう言う認識だ。



濃いと言う僕に“何が?”と聞いてきた空にそう伝えると、





「いやいやいや!庵に言われたかねえし!なに自分はあたかもフツーみたいに言ってんだよ!?」

「…僕フツーだよ?」

「…えええええ。マジで言ってんのか?」





顔を歪ませて“あり得ねえよ、コイツ”みたいな顔で見てくるの止めてくれるかな。



だいたい空には言われたくない。―――――生で格闘技見るために県外に行って勢い余ってリングに乱入したヤツに言われたくない。



涼しい顔をしながらリングサイドで菓子を食べてた戒吏・レスラー(男)に肩を組まれながら勧誘され静かにキレてた蒼・爆笑しながら観客と賭博してた遼。―――――――――平謝りて四人を引き攣り会場を後にした僕。



全ては空の格闘技好きから始まったこと。あの日の出来事は全てがトラウマだ。この中に常識を持ち合わせたヤツなんていない。



空の言い方だと僕が変人っぽいよ。僕はフツーだよ。特に悪い所もないと思う……多分。





「音楽類に関しては執着とかすげえしよ〜。ミュージカルとか連れていかれる此方の身にもなれよ!つまんねえし、眠いのに!」





――――音楽か。



執着、あるのかな?



まぁそれなりにスキだし音を奏でるのも趣味のひとつだよ。専攻は一応、ヴァイオリン。



他の楽器も出来ないこともない。好きで始めた訳ではない。かといって嫌いな訳でもない。音楽一家と呼ばれる“七瀬”だから音楽を学ぶのがフツーだったから。



――――そのなかでヴァイオリンだけは自分から初めて手に取った楽器だった。ただ、それだけ。今となっては一部なのかな。





「空、ミュージカル嫌いなんだ…。嫌がる僕を無理やり格闘観戦に連れて行くくせに…」

「そ、そんな顔すんなよ!俺がわりいみてえじゃん!い、庵だって格闘技をスキになれば万事休すだろ!?」





少し悲痛な顔を見せれば眉尻を下げて泣きそうな顔をされた。わざとなのに。空って詐欺に合いそう。


フッと顔を緩め笑顔を見せると空もフニャッと笑みを浮かべた。



つくづく本当に女の子みたいだと思う。身長伸びてるのかな?牛乳の効果まだ出てないんじゃない?