牙龍−元姫−



空は作業する戒吏をバシバシと叩きながら邪魔をしている。無視されてるのが気に食わないようだ。



そんな空に呼び掛け、ほぼ忘れかけの課題をするように託す。





「げっ、マジかよー!もういいじゃん!分かんねえもん、英語なんて!」

「でも早くやらなきゃ。終わらないよ?」

「遼太だってやってねーじゃん!」





―――――遼?



急に出てきた遼の名前にまたもや疑問府が浮かび上がった。確かに遼も英語で課題出されてたような気がする。





「だってアイツ数学も課題出されてたじゃん!なのに飯食いに行きやがって!」

「遼が?……確かに遼も英語課題あるけど、」

「そうだよ!ぜってえ課題が嫌だから逃げやがったアイツ!あー゙数学なら得意なのによー」

「空は典型的な理数系だしね。でも英語も必要だよ」





空は理数に強い。だけど覚える古文や日本史には、めっぽう弱い。



理数が課題だったら何時間も勉強しなくてすんだのに。



―――ホント何時間やってるんだろ?と今さらながら思う。かなり遣ってるわりに白紙だし。



空は苦手な分野をサボる癖直さなきゃ、と言うよりも直して貰わないと困る。火種飛ぶのは僕だし。





「あー゙くっそー!遼太も勉強しろよ!どうせ蒼衣に手伝って貰うだぜ!?」

「蒼に?―――タダでは手伝わないと思うよ」





いや、絶対。蒼は何か持ち掛けてきそうだよ。アイツがタダ働きをするはずもない。



蒼《世の中ギブアンドテイクじゃね?》
遼《お、なら空を1日貸してやるよ》
蒼《おーけー。交渉成立だな》






―――――このやり取り、昔あったよね。



“例えば”で想像したつもりだったのに実際あったやり取りの気がする。そのあとの空の悲惨さには目も当てられなかった。鬼畜なんだよ蒼は。