牙龍−元姫−






――――――あれ?





ふいに浮かび上がった疑問符。





「ねえ空、遼は?」





遼が頭に浮かんだ事で、戒吏から目を逸らし空に聞く。



いつも煩い遼がいないことに漸く気がついた。



少し違和感はあった、何か足りないって。でも気はつかなかった。たぶん遼の存在が薄いからだよね?うん。



よく部屋を見渡すと蒼もいない。いつも蒼はふらふらしてるからあまり気にはしなかったけど。





「遼太なら蒼衣と飯食いに行った!」





ケッと悪態をつく空はかなり不機嫌な表情へと切り替わった。



え…?蒼と遼一緒にいるんだ。



珍しいことでもないけど。



でもなんで空は機嫌悪いのか分からなかった。ただ遼と蒼がご飯行っただけなのに。寧ろ空なら誘われても行きたくないとごねる筈。



小首を傾げたが次の瞬間僕の蟠りは拭われた。





「……慎さんも居るんだってよ〜」





空は少し落ち込み気味に言う――――――ああ、成る程ね。





「慎さんが居るなら空も行きたかったじゃないの?」

「だ、だってよ〜?遼太と蒼衣もいんだぜ!?―――――無理無理無理。アイツらと三人で飯とか、ぜってえ無理!」





遼と蒼と三人だけでご飯を食べるところを想像したのか即座に否定された。若干顔が青白い。



でも何だかんだ三人とも仲は良いよね。と、思ったものの空が怒りそうだから口には出さない。その代わり少し苦笑した。





「でも慎さん居るなら行けば良かったのに」

「アイツらが慎さん呼びつけたんだよ!慎さんが居るってハナっから知ってたら行ってたっつーの!」

「相変わらず慎さん好きだね」

「あったり前だろ!」





どうやら慎さんが居ることを空は知らなかったみたいだ。



慎さんを本気で尊敬しているのか瞳がキラキラ輝いている。そういえば空が牙龍に入るきっかけをくれたのは慎さんだもんね。