それを理解してねえ豪は馬鹿だよ。仮にもお前も牙龍だったなら分かれよ。何を牙龍で学んだんだよ。何年牙龍に居たんだよ。腐っても牙龍の一員なら、知恵の一つや二つ付けてみやがれ馬鹿が。
もう遅い、ため息しか出てこねえよ。
俺がお前を端から警戒しておけばこんな事にはならなかったのか?―――――俺はお前を最後まで信じてたんだけどな。
なんて、後の祭でしかない。
ポツン
ポツン、
「―――雨か」
ポツリ
ポツリ、
ふと見上げた夜空から雨が降る。雨、それは世界を水浸しにする唯一の方法。いっそのこと全て洗い流して消し去ってくれ――――――――罪さえも。
暗い夜道に独り、俺は立ち止まる。空を見上げ不穏への一歩を感じとる。
次第に強さを増す雨が俺を打ち付ける。雑音が絶え間なく降る雨音に掻き消される。どうせならこのまま何もかも忘れちまいてえな。
夜はいつか明ける、だが、あいつらの夜はまだ明けない、此れからが夜の始まりだ。
「………冷てえな、」
徐々に冷え冷えと凍えるカラダ。
出来た水溜まりに映し出される、情けない顔。全てがもどかしくて何も出来ない自分が腹立たしい。
水の鏡は決して見せてくれない捻曲がった醜悪を見抜くものなのか。なら、いまこの雨は必然か?それとも偶然か。雨に導かれるかのように運命は加速する。
暗い、暗い、空。
こんなにも暗い闇夜に牙龍は動き出そうとしている、龍が唸り牙を向く為に。
嵐になるかもしれないな
(雨が?)
(それとも―――)

