だらだらと重い腰をあげると会計する。ッて、待て待て待て!



おい遼!お前どれだけ食ってんだよ!?お前が呼びつけといてこれは流石にねぇだろ!










―――――「もしもーし。よお慎さんか?俺だ遼様だ。電話してやった事を光栄に思えよ。いま蒼と酒屋に居んだけどよ、こねえ?」

「……はあ〜?いきなりだな。いま仕事終わったばっかなんだよ此方は」

「お!なら仕事帰りの一杯といこうじゃねーか!慎さんの馴染みの店な。遅れんじゃねーぞ?じゃあな」

「は?お、おい!俺はまだ行くとは言ってなっ――――…切れた」







思い出される一方的なやり取り。そして一方的に通話を切られて携帯片手に立ち竦む哀れな俺。



くっそー。出世払いだからな…!



今日、俺の財布が泣いた。



お釣りを手渡され、財布に仕舞う。鉛みてえに重い足が地面にくっつくかのようだ、怠い気持ちになりながらも扉に手を掛ける。





「おっちゃん。また来るわ」

「おうよ!慎ちゃん気ぃつけて帰れよ〜!」





昔からの常連の俺は人柄の良い店の大将に一声かけてから外に出た。




一歩、外に足を踏み出せば――――――別世界。店はアットホームな雰囲気で落ち着けたが外は妖しさの色が漂う。



酒場や遊戯場などが多く建ち並ぶ。故に夜には人通りが多くなる歓楽街へと一変。



でも下手に喧嘩をしようとか思わねえ奴が多くねえ東はまだマシな方だ―――――――牙龍に出てこられたら困るからな。圧倒的勢力を前にひれ伏すしかない、だから騒ぎを起こさない。



人間は学ぶ生き物だからな。何度も何度も騒ぎを起こして牙龍に痛い目を遭わされてりゃあ警戒もするだろ。



―――――――きっと今日は幾ら暴れても牙龍は出てくる事はないがな。