牙龍−元姫−

そんな事を口を閉ざして片隅で考えていたが―――――――慎さんはジョッキから口を離し少し躊躇いがちに口を開いた。



若干。深刻さが伝わり空気がガラリと変わった。



なのにそれとは裏腹店の雰囲気は明るく然して変わらない。





「お前らには悪かったと思ってるよ……」





いきなりの懺悔。



遼太は少しだけ目線を下げた慎さんを見て不可解に思う。勿論それを横目で見ている蒼衣も。





「何がだよ」

「んな気使わなくていい…。お前らの仲を掻き回しちまったのは俺の管理不足でもあるからな」

「は?」





―――――本当に訳が解らない。



遼太は顔を歪めた。『何言ってんだコイツ』と言いたげに。



しかし一体何を勘違いしたのか、そんな遼太を見て薄く笑った慎さん。





「まだ惚けるのかよ。お前らもお人好しになったな。随分と丸くなったな」

「いや、だからよ」

「で?その後響子ちゃんとはどうなったんだ?」





その言葉に沈黙が訪れる。



そして遼太と蒼衣は互いに顔を見合わせた。



目だけで会話をするのは長年一緒にいる二人だからこそ成せる業。





「「………」」

「?」





黙りする二人。目線を合わせ不可解な表情を浮かべる反応に次は慎さんが首を傾げた。



そんな慎さんの様子に遼太は溜め息をつきながら言う。蒼衣もタバコを吹かし慎さんを見つめる。





「慎さん。さっきからなにいってんだかわかんねえんだけど」

「――――は?」





今度は慎さんが不可解な表情を浮かべた。互いに話が噛み合っていないことを今漸く理解したのだ。