「だれが食べるか!“最強”のスパイスより“最凶”のスパイスだろ!んなスパイス要らねえよ!」
「えー」
「えー」
「『えー』じゃねえ!キャラ違いすぎだ!」
突っ込みと否定を述べるのに慎さんの疲労はMAX。数時間前に久々にコイツらに会えると弾ました心。今となっては少し後悔気味だったりする。
慎さんは思った。
こんなとき、庵が居てくれれば…
そう心底思った。
戒吏は居ても無視されそうだし、空は居ても二人にからかわれるだけ。ならば、そう消去法で庵となった。
面倒見の良い庵なら二人をコントロール出来るし俺への被害も最低限で済む―――――そんな願望をを膨らました。
テーブルに置かれたビールに手を伸ばして一気に呑む。ぷはー、と息を吐き出すその姿はまるで仕事に疲れたオヤジみたいだ。
「さっきからキャラ壊れてんぜ?慎さんよ。完璧親父じゃねえか。まだ若いのに。悩みでもあんのか?」
「誰のせいだ!」
「まあまあ。そう向きになんじゃねえよ。ただの可愛い後輩のオチャメなからかいじゃねぇか」
「なら先輩を敬え!俺は年上だぞ!」
恰かも自分は関係ないと言いたげに態とらしく心配する遼太。反省の色さえ示さないお茶目な蒼衣。
そんな極悪コンビに青筋を立て無理難題なことを口に出す慎さん。
―――年上(俺)を敬う日なんてコイツらには来ないだろうな。きと来る日は世界が滅亡する日だ。
自分から言い出した言葉なのに、そう思ってしまい慎さんは叶いそうもない願いに溜め息をついた。
「ホントお前らといると老けちまう……」
「俺様と蒼っち仲良しだもんねー」
「ねー、遼ちん」
嘆く慎さんの呟きに反応した極悪コンビ。
未だに辛いものを食べ続ける遼太とテーブルに肘を付きタバコを噴かす蒼衣。自由奔放で人を疲労に陥れる名人だ。
………慎さんが報われる日は当分(一生)来ないだろう。

