――――「っひ、ひぎゃー!か、か、か、辛ええええ!チクショー騙しやがったなテメエ!」




今日、水を求める慎さんを見るのは2回目だ。何とも哀れすぎる光景。



先程の舌を刺すようなピリッとした味なんてものじゃない。比にならないくらいの電流のように迸る辛さ。



甘党の慎さんにはキツイらしく本能的に涙がうっすら瞳に滲む。





「遼の味覚を嘗めちゃいけねぇよ慎さん」

「遼太様特製スーパーウルトラ激辛スペシャルだ!馬鹿じゃねえの?2度も騙されるとかあり得ねえ!ちったあ学習しろや!あひゃひゃひゃひゃ!」












「…悪魔かお前は」




慎さんは人の不幸を馬鹿笑いする遼太に心底そう思った。その笑い声が悪魔の笑いに聞こえた。



そして同時に必ずいつか仕返しをしようと固くなに心に決めた慎さんだった……




「絶対遼は味覚可笑しい。一回病院に行け」

「それには俺も同意〜」






ゴロゴロゴロ…




――――ピシャーッン!





「お、おいおい待ちやがれよコノヤロー。裏切んのかよ蒼っち!俺様と一緒に世界の調味料探そうっつたじゃねえかよ!これから同盟はどうなるんだよ!?」





衝撃的な顔をする遼太。背景には雷が落ちたよう衝撃と効果音。



ダンッ!とテーブルを叩きつけると感情に浸り蒼衣に必死に言う。その際また醤油が揺れる。いつか倒れそうでヒヤヒヤする。



慎さんは『なに言ってんだコイツ』と呆れた表情で遼太を見る。気持ちは分からなくもない。





「……もうお仕舞いだ、遼ちん。おめえの舌には着いてけねえ。同盟は破棄だ。解散するしかねぇよ」

「か、解散…!?」

「解散っつてもよ、何も野望までもが消えたわけじゃねぇよ?俺の分まで頑張って見つけろよな。最強の激辛スパイスをよ?」

「蒼っち………おう!俺様最強の激辛スパイス見つけるぜ!んでギャフンと泣き言を言わせてやろぜ?慎さんを」

「有り難迷惑だ」





二人の茶番劇に突然出てきた自分の名前に驚きながらも即座に否定する慎さん。



それと同時にこの折り合いを連ドラで見たと思った。



友情と青春を織り混ぜた熱き少年達の最高視聴率を叩き出している流行りの大人気ドラマ。



いつも何かしらに影響される二人を見てお前等もアレを見てるのか――――――――――そう思った慎さんも実はリアルタイムで見ていたりする。