「……遼ちんは辛えのがお好みだからね〜。その味覚には参っちまうぜ」




新鮮でしゃきしゃきなみずみずしい色とりどりのサラダを食べる蒼衣。苦笑いしながら隣に座る遼太を横目で見る。





「俺の特製甘口ソースはどこだ?」

「オイオイ第二の空かよ。女みてえなもんつけて食ってんじゃねえよ」

「おい。ちょっと待て。何だその言い草は!俺はお前らの先輩だぞ!」




遼太と蒼衣の“先輩らしい”スーツ姿の男は言う。



甘さたっぷりミルクのソフトクリーム。そしてもちもちチーズドーナツを組み合わせ口直しする二人の“先輩”。




「………はあー。何でこんな間抜けな奴が牙龍の前総長なんだよ。俺様ショック。当分立ち直れねえぜ。慰謝料払えよオラ」

「ぼったくりか!見ないうちに性格の悪さに磨きがかかってんぞ!お前仮にも俺は前総長だぞ!?」

「なら、んな甘いもん食ってんじゃねえよ。フツー男なら黙って辛いもん食うだろ!ああ!?」

「そりゃあお前の価値観だろ!俺は甘党なんだよ!砂糖が全ての男だ!」




苛立つ遼太はバンバンと木材で出来た店のテーブルを叩きつける。端に置いてある醤油がガタガタ揺れる。



話す声もテーブルを叩く音も其れなりにデカイがどこもかしこも雑音だらけで誰も気には止めない。



ガンをつける遼太を宥めることなく、対等に言い合うスーツの甘党。



基、"慎さん"

牙龍の前総長。

戒吏を時期総長として牙龍を託した人物だ。普通なら甘党の男を先代として敬い慕う筈だが生憎、コイツらは普通じゃない。

普通を求めてはいけない。