牙龍−元姫−

固まる私を置いて男は、私に背を向ける。



男は流れるようにフードを取り私に振り向くと――――――赤が目立った。



黒髪の中に点々とある色鮮やかな赤のメッシュ。



“情熱の赤”
“燃える焔”



表現なんて様々。



でもこの人の場合は…



“深紅の血”だと、思った。





よく見ると全てが赤色に包まれていた。パーカーも赤。ズボンもワインレッド。靴も赤。髪が唯一の黒色―――――でもそこにも少々の赤が混じる。





「僕はァー“春色”」





春色?

名前が“はるいろ”なの?





「季は春なんだァー。ハルって呼んでー」

「…はる?」

「響子ちゃんに無断で接触したことがバレると《秋》が怖いんだよねェー……。でも《冬》はもォーっと怖い!だから内緒にしておいてねェ?」





《ハル》と名乗るこの人が怖がる《冬》と《秋》はどんな人なんだろう…?


まずこの赤い人は一体何者?



遠ざかる赤色を尻目にずっと考えていた……