牙龍−元姫−




ち、違うっ!敵なんかじゃないっ!友達だってっ!



友達だって言ってくれたっ!





【あれは嘘だよ】





嘘じゃない!嘘をつく子なんかじゃない!





【信頼しすぎだよ。家族にも裏切られたのに】





……それはッ





【このままじゃ奪われるよ、全部】





“奪われる”?





【戒吏も蒼衣も遼太も空も庵は当たり前。勿論、里桜と千秋も。ぜーんぶ、失うよ。空っぽ、真っ白、何にもない】





里桜も?千秋も?

真っ白、空っぽ。

わたしには何も残らないの?





【そうだよ。だから、奪われるくらいなら――――】
















奪っちゃえ





「……奪う?」





呟いた私に男は被っているフードから覗く口を、一層歪また。



“待ってました”と云わんばかりに。



瞳が虚ろな私に男は囁いた。






『 ××××× 』





それを聞き私は正に “ぐちゃぐちゃ”になった。もう心も頭も掻き混ざる。どうしていいかも、どうしたらいいのかも、わからない。


なのにこの人の言葉に嫌気が差さず恍惚に聞いていたのは、きっと―――――似ていたから。傲慢さや狂気さが。



この人が“あの人”にどことなく似たものを持っていたからだ。



“あの人”を思い浮かべながら、ただ目の前にいる男を見つめるだけだった。