牙龍−元姫−


「…憎くなんかないよ。友達だもん」

「えェー。うそだァー。憎くないハズないよォ」

「…どうして?」

「だってェ響子ちゃんはァー」





言葉を選んで慎重に答える。



私は空気に重みを感じるが、



そんな様子を微塵も感じさせない天真爛漫な男。



一旦言葉を切ると妖しく笑った。






「橘寿々に居場所を奪われたから」

「……ッ」





これには表情を隠すことなんて出来なかった動揺を露にする。



この人は私の心を揺るがすモノを知っている。





「憎くないハズないよねェー。だって敵だもん」

「て、き?………敵?」

「そうだよォ?“敵”。牙龍も敵。響子ちゃんを傷つけた奴等はみィーんな敵だよォ?」




きゃはは、
きゃははは、
きゃははは、
きゃはははは、



笑い声が私を支配する。



まるで、マインドコントロールのような笑い声に頭痛が増す。



敵?寿々ちゃんが?牙龍が?



私の敵?――――そんな筈ない。



ちがう…



違う!












ほ ん と う に ?