牙龍−元姫−

真横すれすれに刺さった鋭い銀色のものに冷や汗がでる。



身体に走る激痛なんて忘れるくらいに恐怖がじわじわと滲み、私を襲う。



この人を一目見た瞬間から少し気づいていた。狂気が見栄隠れしていることに…







「きゃはは!僕壊れた玩具には興味ないんだよねェ…」

「壊れた?」

「だって響子ちゃん怪我してるじゃァーん。もう、僕の玩具に手を出した奴は誰だよォ」





気づいて、たんだ、



当たり前に気づくものかな…?




──……いや。こんなにも顔を真っ青にしていたら例え鈍い人でも嫌でも感づくか。



きっと私の顔色は血の気が引き青白くまるで死人のようだと思う。





「ねぇねぇ響子ちゃんはァ“橘寿々”って奴のこと知ってるゥ?」

「…どうして?」

「んーっとねェ。







憎く無いのかなーってネ」





突然のことで怪しげに私は眉を顰めた。



いきなり寿々ちゃんのことを聞くなんて、絶対に裏があるとしか思えない。



警戒する私に無邪気な様子で答えるが次の瞬間には、ガラリと、雰囲気が変わった。