「あっ。ね、ねえ見てあれ!」
そしていきなり。本当に突然。
友達が吃驚したような声を出して私に向かって叫んだ。私は逆に友達の声に吃驚したけど。ほんと朝から元気な友達だ。
「なに?」
「ほら!あれ!」
「え?………あ」
――――――牙龍‥‥
小さく呟いた。
彼等が朝から来るなんて珍しい。だから彼女が来る前から自棄に騒がしかったのか。
彼女は彼等に気がついてないけど彼等は彼女の存在に気がついているようだ。そうして鉢合わせしないように足早に去って行った。
あからさま過ぎて、嫌。
男の癖に逃げている感じがする。ほんとにこういうのは嫌い。逃げるくらいなら面と向かって言えばいいのにって思ってしまう。
それにしても…
「いまは橘さんが野々宮さんの居場所にいるんだね」
恰も私の言葉を代弁するかのように友達が言う。
友達と私も同じ事を思っていた。これは牙龍を見掛ける度に思ってしまう。
何かさ。モヤモヤするんよね…。別に姫に戻ってほしい訳じゃないけどこういう場合、野々宮響子さんの気持ちはどうなるんだろ――――――――?

